今回は、私が購入した中古住宅に雨漏りが見つかってしまったお話です。
購入時には物件状況報告書の雨漏り有無の欄にて「現在まで雨漏りは発見していない」との告知をしていながら、実際には売主は雨漏りがあったことを、以前から認識していたと思われる証拠が見つかったケースです。
これは不実告知にあたると考えた私は、弁護士に相談して訴訟に踏み切ることにしました。
というわけで、今回は「雨漏りの不実告知について売主に瑕疵担保責任(契約不適合責任)を問えるのか?」についてブログで解説していきたいと思います。
購入までの経緯と雨漏り発生の状況
本物件は、築30年の中古の戸建てです。
2018年に初の法人名義で購入した、思い出深い物件でもあります。
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物件購入までの経緯
はじめて内見したときには、不動産会社(仲介会社)の方に、鍵を開けてもらい室内を案内してもらいました。そして、物件自体は非常に気に入ったため、指値も入れて私は買付証明書を作成。その場で、直接仲介さんに渡しました。
数日後、仲介会社さんから「無事買い付けが通りました!」との連絡があり、話がトントン拍子でまとまりました。
しかし、売主さんはお忙しい方のようで、契約時・決済時とも出席されず、私は売主さんには一度もお会いすることはできず、物件の引き渡しとなりました。
私はこの戸建てを貸家にするつもりだったので、すぐにリフォームして、無事入居付けまで終えました。この2年間、台風で一度門灯が壊れたことがありましたが、それ以外は問題なく賃貸物件として運営していました。
しかし、ある日突然、入居者さんから悲しい報告がありました。
雨漏りが発覚!
購入から2年後の3月中旬のある日、「雨漏りしてきました!」と入居者さんからメッセージを頂きました。
すぐに現場に行ってみたところ、以下のような感じになっていました。
このように天井のところに壁紙クロスが2重張りされていました。実はこの2重張りのクロスは、私が物件を購入した2年前からずっと貼ってありました。
当時、私もこの2重張りクロスについては、あまり気に留めていなかったのですが、今回雨漏りで水が滴り落ちているのが、ちょうど2重張りされているこの部分からだったのです。
肝心の雨漏りの原因ですが、業者さんと一緒に散水テストをしたところ、天井裏に2階のバルコニーの排水管が通っていることが判明し、そこから漏水していたようです。
天井裏の写真がこちらです。
珍しいケースですが、天井裏に排水管が通っており、散水テストすると配管から水漏れしてきます。
これを”隠れたる瑕疵”として、売主に責任追及できるのか?弁護士に相談することにしました。
隠れた瑕疵とは?売主の瑕疵担保責任について
まず、隠れた瑕疵とは以下のようなものを言います。土地・建物それぞれあります。
こうした隠れた瑕疵について、売主は「瑕疵担保責任」という責任を負うことになります。
一方で、不動産の売買契約時に、売主が知っていた瑕疵について、買い主へきちんと説明し納得してもらっていれば、売主はその瑕疵について責任を負う必要はなくなります。
しかし、これでは売主がいつまでも責任を負うことになり負担が大きくなるため、通常の個人間の売買契約では、「引き渡しから3ヶ月以内」とか「瑕疵担保責任は免責」などの特約を設けることが一般的になっていますね。
実際、この点については、本物件の契約でも「3ヶ月以内の請求にかぎり売主は責任を負う」との契約でしたが、不実告知があると「特約は無効」ということになるようです(そのため、今回は裁判で争うことにしました)。
なお売主が業者の場合には、最低2年間の瑕疵担保免責を負うこととなり、これより短い特約にしても、その特約は無効となります。
業者が売主の場合については、以前「中古戸建てを購入して1年後に雨漏り発見!オーナーチェンジ物件の闇」でも書いていますので、ご興味があれば御覧ください。
売主の不実告知について損害賠償請求できるか?
さっそく弁護士先生に相談したところ、以下の2つを立証してください、というアドバイスがありました。
- 契約時に雨漏りが発生していたことの立証
- 売主が雨漏りを認識していたことの立証
基本的に裁判では、原告側に立証責任があります。つまり、買い主の私が証拠を提示しなければいけません。
まず1の「契約時に雨漏りが発生していたことの立証」についてですが、契約時にすでにクロスの2重張りがされていたため、当時から雨漏りが発生してた証拠になります。
つづいて2の「売主が雨漏りを認識していたことの立証」についてですが、こちらのほうが大変です。
一応、仲介会社を通じて、売主へクロス2重張りを追求したところ「汚れていたので貼った。雨漏りしている認識は無かった」という回答が来ました。
ただし天井裏の配管に、雨漏りがあった配管部分にテープが巻かれていて、応急処置したような跡があります。
以下の部分ですね。
このような応急処置した跡があることは、「売主が雨漏りを認識していた一つの証拠」になると考えています。ただし、このテープを巻いた行為が、業者がやったのか?売主がやったのか?現時点では分かっていません。
なおこの部屋を平成11年に増築した工務店が、この修繕をした可能性があるのですが、その工務店はすでに倒産しており、そちらのルートで追求していくことは不可能でした。
今後の訴訟ステップについて
現段階では、弁護士先生に相談している段階ですが、まずは内容証明を送り、修繕費を請求していくというのが王道になります。
ただし懸念点として、クロスの上張りは買い主側でも購入時に気づくことができたはずである、ということが言われる可能性があるそうです。その場合、買主側でも雨漏りを認識できた可能性を指摘されるかもしれません。
もう一つは、売主が頑なに「雨漏りを認識はしてなかった」と言われた場合ですが、クロスを上張りしてる事実はあるため、「雨漏りとして当然認識できたはずである。売主にも過失がある」という主張がどこまで通用するのか、現状では未知数です。
弁護士先生からは、裁判で勝てる可能性は十分あると言われていますが、もう少し証拠をしっかり集めてから、手続きに入りたいと考えています。
なお今回は修繕費用が70万円くらいと、少額訴訟の上限額(60万円)を若干オーバーしてしまっているため、私の方で簡潔に提訴していくことが難しい状況でもあります。
もちろん、内容証明により和解するのであれば一番良いのですが、売主が無視すれば、裁判までもつれ込む可能性もあります。通常裁判まで弁護士に依頼すると、着手金+成功報酬でかなり掛かってしまうため、最悪は費用倒れになりますね。
このように裁判も掛ける手間、費用、勝てる見込みなどトータルで判断して進めなければいけないということになります。
(追記)弁護士名で内容照明を送った結果・・・
けっきょく、弁護士名で内容証明を送ることにしました。
というわけで、迷わず内容証明を送ることにしました。
内容証明の雛形を公開します
以下が、送った内容証明の文章です。
今回の弁護士への報酬ですが、こちらの内容証明作成&送付に、5万円(税別)かかりました。なお、よっぽど交渉が何度も往復しない限り、成功報酬はナシで請け負ってもらえました。
今回のように70万円の請求額でも、着手金5〜6万円程度、成功報酬10万円くらいが相場になります。それが今回は、「一発で和解になるなら、内容証明作成費用だけで大丈夫ですよ」と弁護士先生に言ってもらえて、大変ありがたかったですね。
合意書の雛形について
最終的には、売主さんにも瑕疵として認めてもらい、無事、リフォーム費用を払ってもらえることになりました。
このように売り主・買い主で和解が成立したら、その後「合意書」を締結する必要があります。
今回使った雛形がこちらです。
というわけで、今月無事、雨漏りの修理費用の振り込みを確認できましたので、めでたく解決となりました。
実際、裁判まで行っていたらどうなっていたのか分かりませんが、弁護士に内容証明を依頼してよかったと思います。売り主・買い主が直接話し合うと、どうしても感情的な部分が出てしまうこともありますからね。
みなさんも、中古住宅の雨漏りで、前所有者に瑕疵担保責任(契約不適合責任)を問う場合には、ぜひ参考にしていただければと思います。
以下、関連記事です。
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▼カチタスの中古戸建見学会へ参加したときの感想です。リノベーションの参考にご覧ください。