新築アパート投資が盛んな時代
不動産業界には、新築アパート投資を専門にやっている業者がたくさんあります。
理由として、第一に相続税対策になる側面があります。積算評価が低くなる新築であれば、相続の際に課税額を減らすことができます。
資産家向けに新築アパートの営業をするスタイルは今後も続くでしょう。また投資額が大きいことから、売買時の仲介手数料が大きくなるので仲介メリットが大きいのも特徴です。
利回りと頭金がポイント
新築アパート投資のポイントは、「利回り」と「頭金」であると私は考えています。新築アパート投資を手がけている有名な大家さんが、成功するためのシミュレーションを次のように挙げているのを見たことがあります。
- 物件価格:1億円
- 1K×12世帯
- 利回り8%
- 頭金1割を入れる
こういった物件を金利2%・融資期間30年で地銀・信金あたりから借りることができたら年間収入800万円となり、そこからローン返済370万円を引くと、手取りが400万円くらいになります。これを繰り返して、2棟目、3棟目と買い進む手法です。
この場合、新築で1世帯あたり55,000円で貸出している計算になります(800万円÷12世帯÷12ヶ月)。新築アパート経営が成り立つ、土地値の安いエリアで考えると新築でも単身用なら5万円台くらいというのは、妥当でしょう。
新築アパートの最大リスクは「家賃下落」
この例だと、購入後当初は、収入は55000円×12世帯で毎月66万円ほどになります。ローン返済が毎月33万円ほどなので、返済率50%となり安定した収入を生んでくれると思います。築10年くらいまでは修繕費用なども掛からない点もメリットです。
しかし新築アパート投資の一番のデメリットは、所有期間中のキャッシュ・フローが年数が経つごとに出なくなることです。なぜなら家賃は入退去のたびに下がっていくからです。
例えば10年後には家賃が1世帯45000円まで落ちると、毎月の収入が54万円になります。20年後には1世帯が例えば40000円まで落ちると、毎月の収入は48万円になります。
その場合でもローンの返済は必ず毎月33万円あるので10年後には返済比率61%になり、20年後には68%となり、返済負担がどんどん増えていくということです。
これが新築投資の最大の落とし穴になっています。
長期所有できれば売却益が狙える
次に、新築アパートの売却益について考えてみます。
築10年だとローン残債が6575万円ほどあります。その時の家賃収入が1世帯45000円×12世帯×12ヶ月=648万円なので、アパートを利回り10%で売却すると6480万円で売却することができます。残債6575万円、売却額6480万円なら収支トントンです。
これが築20年になるとローン残債が3615万円まで減っています。その時の家賃収入は1世帯40000円×12世帯×12ヶ月=576万円とすると、アパートを利回り13%で売ると4430万円で売却できます。残債3615万円、売却額4430万円なら、数百万円の利益が出ます。
最後に築30年になると、ローンが完済します。1世帯家賃が35000万円まで下落していても、35000円×12世帯×12ヶ月=504万円あります。利回り15%で売却できたら3360万円で売れることになります。残債ゼロなので、税金を除いた金額は全額収入になります。
築20年時点で残債が3615万円あっても、築30年までの間でローン返済がガンガン進めば含み益が1年毎にどんどん大きくなります。
これが収益物件ポータルサイトで築20年〜30年で売却に出されているアパートが多い理由 だと私は考えています。
おわりに
新築アパートを購入するなら、最低でも利回り8%は確保しないと利益を出すことは厳しいと思います。なぜなら10年目以降の家賃下落を考えると、ローン返済比率がどんどん上がって危険水域に達するからです。
返済比率が上がるとリスクなのは、突発的な修繕やリフォーム、大規模修繕(外壁塗装・配管)などの際には、赤字に転落するからです。
アパート経営は、どうしても瞬間最大風速的な出費を覚悟していなければいけません。
なお、上記シミュレーションは頭金を1割を入れてこの計算ですから、某新築アパートメーカーが出しているような、利回りが6〜7%の新築をフルローンやオーバーローンで購入しては絶対に儲からないと考えたほうが良いでしょう。
新築アパートを購入する理由は、相続などもありますので購入目的は人それぞれですが、長期的なシミュレーションをした上で、購入判断をすべき投資になります。
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