『何度言っても、支払いをしてくれない』、『内容証明を送ったけど返事がない』
そのような方のために「少額訴訟」という大変便利な訴訟制度は、ぜひおすすめです。
ちなみに訴訟というと難しいイメージがありますが、少額訴訟は60万円以下の損害に対して、誰でも簡単に裁判を起こすことができます。
そこで今回は、、、
- 少額訴訟の4つのメリット
- 少額訴訟の注意点
- 私のはじめての少額訴訟(体験談)
について書いていきます。
これから「少額訴訟を利用して、なんとかお金を回収したい!」と思っている方の参考になれば幸いです。
少額訴訟の4つのメリットとは?
少額訴訟には、以下の4つのメリット・特徴があります。
- 短期間で判決が出る
- 費用が安い
- 手続きが簡単
- 勝訴すると強制執行できる
それぞれ順に解説していきます。
1.短期間で判決が出る
支払いをしてくれない相手に対して、内容証明を送ったり、督促を続けても時間がかかるだけです。その間ずっとストレスが続くのもイヤですよね。
少額訴訟の場合は原則、1回の審理で判決が出ますので、すぐに決着を付けることができます。
具体的には訴状を提出してから、だいたい1ヶ月〜1ヶ月半ほどで簡易裁判所で裁判が開かれます。その日に双方の言い分を聞いたり証拠を調べたりして、当日に判決まで言い渡されます。
以上のように非常にスピーディーに結論を出せるのが良いですね。
2.費用が安い
費用は「印紙代」+「切手代」の合計額になります。
まず「印紙代」は訴訟金額によって、以下のようになります。
訴訟金額 | 収入印紙代 |
---|---|
〜10万円まで | 1,000円 |
10万円以上〜20万円まで | 2,000円 |
20万円以上〜30万円まで | 3,000円 |
30万円以上〜40万円まで | 4,000円 |
40万円以上〜50万円まで | 5,000円 |
50万円以上〜60万円まで | 6,000円 |
ここに切手代は4,000円程度プラスしてかかります。したがって少額訴訟にかかる合計費用は、印紙代+切手代で5000円〜最大でも1万円程度です。
もし弁護士を利用して、訴訟依頼をすると以下のように非常に高額になります!
(訴訟金額50万円の場合の一例)
- 依頼前の相談料 5千円
- 着手金 10万円
- 成功報酬 10万円
弁護士を利用すると、最低でも20万円くらい掛かるということになります。これは高いですよね。
実際、弁護士事務所に相談に行くと、少額訴訟の場合は自分で訴えを起こすことをオススメされることがほとんどだそうです。
逆に言えば、自分で訴えを起こすことができる簡便な制度としてできたのが「少額訴訟」制度であるとも言えます。
3.手続きが簡単
少額訴訟は誰でも簡単に訴訟ができるようになっています。
使う書式フォーマットは、裁判所のHPよりダウンロードできます。
※こんな感じのフォーマットです
ちゃんと記入例まで付いていて、これがとても参考になります。
基本的には、この記入例に沿って空欄を埋めていくだけなので、そんなに難しくありませんよ。
書き方で不明点があれば、簡易裁判所に行けば事務員の人が、丁寧に書き方を教えてくれますので、安心ですよ!
4. 勝訴すると強制執行できる
みなさん裁判って「勝敗を決めるだけで、何の役にも立たない」と思っているかもしれませんが、実際に勝訴すると「強制執行」で、財産の差し押さえまで実行することができます。
スタンダードなのは、相手の「銀行預金口座」ですね。
必要な情報は、◯◯銀行◯◯支店まで分かればOKです。口座番号などは必要ありません。ただし口座にお金がないと、空振りに終わりますので、給料日前などが狙い目になります。
少額訴訟の注意点
ここでは少額訴訟の注意点について書きます。主に3つあります。
注意点①:通常訴訟への移行
被告から通常の手続きで審理してほしい旨の申し出があると、少額訴訟による審理ができないことになっています。
その場合は通常訴訟に移行されますので、控訴・上告など裁判が長引くケースに発展することもあります。
注意点②:回収不可能なケース
たとえ裁判で勝訴したとしても、相手が無職だったり、勤務先が分からなかったり、銀行口座の所在が分からないと、差し押さえ自体ができません。
したがって、勝ち目がある裁判であれば、事前に相手の銀行口座や勤め先給与などの所在を把握していることが条件になってきます。
ここかなり重要なポイントです!!
もし銀行口座が分からないと、被告の居住地の近くの金融機関を片っ端から差し押さえしたり、調査機関に依頼して調べてもらうには、多額の費用がかかるので注意してください。
注意点③:回数制限あり
少額訴訟は年間10回までの制限があります。特に問題ないかと思いますが、知っておきましょう。
私のはじめての少額訴訟(体験談)
私は2018年に、人生ではじめて少額訴訟を起こしました。
※ここからエピソード形式でお伝えします。
私は不動産賃貸業をやっているのですが、新規に購入した収益アパートの配管から水漏れがあり、隣家のお庭がびしょびしょになっていました。
そこである日突然、隣家の人から損害賠償請求の内容証明が、私宛に届いたのです。簡単に言うと「おまえが新しいオーナーになったのだから、お前が水漏れを修理しろ」という内容でした。
少額訴訟を起こした理由
私がアパートを購入したのが2017年4月。漏水のクレームがあったのがその4ヶ月後でした。すぐに私も現場に駆けつけてみたところ、確かに水漏れしています。
さっそくアパートを売買仲介した不動産会社を通じて、売り主(アパートの前オーナー)に修繕依頼をしました。
※水漏れはこんな感じでした。コンクリートの中にある配管が割れて、継ぎ目から水がダダ漏れしていました。浄化槽を通した後の水ですが汚水です。。。
結果、前オーナーが一時対応をしてくれましたが、中途半端な工事だったので、半年後にはまた水漏れが再発しました。
そこで再度、根本的な修理を依頼したところ「アパートは瑕疵担保免責で販売したから、うちには関係ない」の一点張りで、まったく対応してもらえませんでした。
しかし隣家の方にもよくよくヒアリングしてみると、この漏水事件は5年も前から発生しており何度も前オーナーに修繕請求したが、修理してくれなかったらしいのです。
中古の収益不動産を購入した場合、通常は「瑕疵担保免責」なのですが、それは隠れたる瑕疵(つまり知り得なかった事実)の場合には、瑕疵担保責任が発生しません。
※瑕疵担保は、通常は引き渡し後、3ヶ月程度とされることが一般的です(詳しくは、売買契約の内容が優先されますので、契約書をご確認ください。)
一方で今回のように5年も前から漏水していて、隣家とトラブルが合った場合は、「既知の瑕疵」だったわけですから、当然のごとく修繕義務が発生します。
雨漏りやシロアリもそうですが、基本的は既知の瑕疵(知っていて隠してた瑕疵)だったことを証明できれば、瑕疵担保責任を追求することができます。
弁護士に簡易相談
とりあえず私の場合は、弁護士に相談しにいくことにしました。でも顧問弁護士などいませんから、いろいろインターネットで調べました。
すると以下の2つの方法があることが分かりました。
- 市役所の弁護士相談(無料)
- 弁護士事務所への相談(有料)
市役所の弁護士相談は、無料で良いのですが月に2回くらいしか開催して無くて、2週間後の日程だったので、早く決着をつけたい私は、弁護士事務所に有料相談することにしました。
どこの弁護士事務所でも有料相談をやっていて、30分5000円のところが多いようです。
私はいろいろ調べていたら宅建協会の人に「県の弁護士会が安く相談やってるよ!」と教えてもらったので、千葉県弁護士会というところに問い合わせると30分2000円と格安で相談することができました。
ここで相談して私の主張が正しいことを確認したことで、少額訴訟することに決心しました。
弁護士の先生から、こういう証拠を集めたほうが良いよとか、こういう資料があると裁判で有利になるよ、という入れ知恵もたくさん聞けたので本当に有意義でした。
やっぱりプロの意見は聞いておくべきものですね。
訴状作成&簡易裁判所へ提出
さっそく訴状提出です。
裁判所のホームページから訴状をダウンロードして記入し、可能な限り集められる証拠を持参して、最寄りの簡易裁判所に向かいました。
当日、私が作成した訴状の一部不備があった点を直したり、「紛争の要点」のところを追記が必要だったり小1時間ほど掛かりました。
でも、係の人が丁寧に教えてくれて、印紙と切手を購入して、無事申請を済ませました。
期日決定
期日とは「裁判の日」のことです。期日の決定は、訴状提出から2週間以内くらいには連絡があります。私の場合も、10日後くらいに電話で、期日の相談がありました。
9月5日に訴状提出し、裁判の日(期日)は10月19日に決定したので、申請から約1ヶ月半後ということになります。
水漏れ修理
結局、裁判まで1ヶ月ちょっとあるので、その間ずっと水漏れがしているのも申し訳ないので、一旦は私が費用を立て替えて水漏れの修繕を実施して、費用を支払いました。
その額、486,000円也。
けっして安くはないですし、払う必要のない費用を払っていると思うと、かなり気分が悪かったですね。でも裁判で勝訴すれば、取り返せるわけですから、問題ありません。
最終的には和解で終わった
裁判の日まで1ヶ月あったので、私は追加の証拠を集めたり、裁判に向けて鼻息荒く、超臨戦態勢でした(笑)
しかし、ある日アパートを仲介した売買会社から突然メールが来ました。メールにはこう書かれていました。
「前所有者さんから連絡が有り、
和解書には「水漏れの修繕費用として486,000円の支払い義務があることを認める」と書いてありました。結局、アパートの前所有者は「私が本気で訴えると思ってなかった」ので、訴状が届いてびっくりしたのだと思います。
少額訴訟といえど、訴えられた方(被告)にとっては、かなりのプレッシャーを与えることができることを実感しました。
少額訴訟は、裁判当日にも裁判官から和解を促されることがあるらしいですが、私の場合は、裁判前に和解になったので、訴訟の取り下げを行うことにしました。
裁判もちょっと経験してみたかったですが、結局お金も全額回収できたので良かったです。1万円くらいの経費で、48万円取り戻せたので万々歳でしょう。
まとめ
現在、お金の回収に困っている人は、泣き寝入りはもったいないです。ぜひ自分がお金をもらう権利があるのであれば、しっかり主張しなければいけません。
正当な根拠(証拠)があるのであれば、堂々と相手を訴えて、お金を全額回収しましょう。費用1万円と、訴状を1枚書くだけで、回収できる可能性はあるのですからやる価値はあります。
この記事が、みなさんの大切なお金の回収に役立てば嬉しいです。
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